有村架純の情報に接しないで、1日を終えることは難しい。映画、ドラマ、舞台、CM、雑誌のグラビアからWEB記事まで、彼女の顔を見ない日があるだろうか?そんな問いが成り立つほどの、超がつく売れっ子となった有村架純。「黒髪に染めた」というだけでニュース記事ができてしまうその人気は、まぎれもなく当代トップクラスだ。アイドル然とした、愛くるしいルックス。だが、演技は骨太だ。連続テレビ小説『あまちゃん』では、小泉今日子が演じた主人公の母親役の若かりし頃を見事にこなし、さらなる飛躍のきっかけとした。あるCMでは気の強いかぐや姫役を演じ、ある映画では可憐なヒロイン、様々な顔を持つ。そこで今回は、そんな有村架純のフィルモグラフィを振り返ってみた。「とにかくかわいい」だけで済ましても何ら問題ない、だがもっと奥深い魅力を知りたいあなたはぜひチェックしてほしい。(文:編集部)
Recommended Movie No.01
映画「ビリギャル」
【TBSオンデマンド】
(2015年)
■素材のよさがしっかり出た佳作
ベストセラーを原作とする本作で、有村架純は異色ともいえる挑発的なルックスにチャレンジ。異色なのは見た目だけではなく、役柄自体にも言えること。有村架純演じるさやかは、文字通りの落ちこぼれ。聖徳太子を「せいとくたこ」と読み、テストでは100点満点中の5点を記録。そんな“ビリギャル”が、恩師のチカラを借りて鮮やかに一発逆転……と簡単に要約できるほど、物語はスピーディには進まない。5年間も一切勉強してこなかった自分が、私学の雄・慶應義塾大を目指すことへの葛藤、そして周囲の無理解。何度も心を折れそうになるさやかは、それでも懸命に前を向き、ひたむきに努力を重ねていく。その姿に比例するようにさやかはメイクダウンしていく。派手さこそ失うものの、有村架純本来の芯の強さ、瞳の輝きは終盤になるにつれ増していくようだ。素材の良さをしっかり引き出した佳作だ。
Recommended Movie No.02
■シリアスな映像の中、ほっとできる存在
暗くなるような台詞でも笑って口にできる、明るく好奇心旺盛なキャラクター・愛梨。本作の有村架純は、主人公の心に差し込む一条の光のような存在。空に向かって両手で四角を作ってカメラのシャッターに見立てたり、殺人事件の容疑者になった悟を1人だけ信じ抜いたり。「こんな彼女なら今すぐほしい!」と思わずに居られない、愛らしさを振りまく。本編では、悟を自宅にかくまったことから真犯人に命を狙われることに。シリアスな映像が続く中、彼女の笑顔にホッと救われる。メイキング映像では、「『僕街』撮影シーンでリバイバルできるならどこに戻りたい?」という質問に、悟の家でカレーを食べたシーンを挙げ「もう一度カレーを食べたい」と答えるなど茶目っ気たっぷりな様子も。
Recommended Movie No.03
■静と動、2つの有村架純
ベストセラー漫画の実写版となる本作は、ややもするとおとなしいタイトルからは想像もつかない本格派スプラッターホラーだ。有村架純は、黒髪の女子高生・早狩比呂美(はやかり・ひろみ)役を演じる。割り切れない人生を送っていた比呂美は、大混乱の中で英雄と出会い、ともに逃亡。2人で過ごす中で英雄に対しやすらぎを感じ、英雄の肩にもたれて眠ってしまう。その無防備な寝顔は、有村架純ファンならずとも息をのむ美しさだ。樹海の中で新生児にかまれ"ZQN"(ゾンビ)となってしまうも、意識を混濁させながら英雄の危機に立ち上がってZQNたちを撃退する。ZQN化してからは台詞がないものの、弱々しかった"人間"偏、静かな表情の中に強さをたたえる"ZQN"偏、いずれの有村架純もただただ魅力的!
Recommended Movie No.04
(c) 2015映画「ストロボ・エッジ」製作委員会 (c) 咲坂伊緒/集英社
ストロボ・エッジ
(2015年)あらすじ
恋に奥手な女子高生、仁菜子は学校で大人気の男子、蓮と通学途中の電車で出会う。少しずつ距離が近づいていくにつれ、仁菜子は蓮に恋をしていることに気づくが、蓮には年上の彼女がいた。それでも仁菜子は蓮に想いを伝えようとするが……。タイトルにもある、恋をしたときのまぶしい想いが胸に突き刺さるような瞬間を描いた、ピュアなラブストーリー。
■隠しようもない芯の強さ
「有村架純は、ショートカットでもかわいい!」そんな恐るべき発見、気付きを届けてくれるのが本作。大好きな蓮には彼女がいる、それでも思いを伝えたい、伝えるだけで満足……そんないじましく、せつない思いを抱え、迷いながら日々を送る女子高生を見事に演じきった。弱さばかりを見せるようでいて、「蓮には年上の彼女がいる」と諭された際に漏れた「わかってるよ!」の言葉には、仁菜子の芯の強さが消しようもなく現れている。可憐な見た目とは裏腹な芯の強さを持つ、有村架純が演じるのにぴったりのキャラクターといえよう。
Recommended Movie No.05
■予期しない妊娠をした女子高生役を演じきる
同級生との子どもを妊娠した、関東の女子高生・歩美役を演じる有村架純。幼い弟たちと彼女を懸命に育てる母・寛子(富田靖子)に迷惑をかけられない、と妊娠の事実を隠し、ひそかに自宅で出産。逡巡を重ねて「こうのとりのゆりかご」のドアを開く。たまたまその場を見ていた安田に声をかけられ、「ごめんなさい……」と泣き崩れる姿は、見るものの心を打つ。一方で、気持ちが落ち着いた途端に「親には迷惑をかけられない、絶対に言わないで」と繰り返すなど、この作品での有村架純は“無責任な妊娠をした女性”をもしっかり表現している。ちなみに『こうのとりのゆりかご』で赤ん坊を預けられるのは2週間ほど。それ以上の期間になる場合は、地元の乳児院に預けられる。命を守り育てるのは、どのみち大きな責任と犠牲が伴うのだ。
Recommended Movie No.06
女子ーズ
(2014年)あらすじ
地球の侵略を目論む怪人を倒すため、「苗字に色が入っているから」という安直な理由から集められた5人の女子。しかし、それぞれには本業があり、そちらを優先して全員が揃わないこともしばしば。なんと5人は本業の片手間で地球を守っていたのだ。果たして女子ーズは地球を怪人の魔の手から守ることができるのか。
■常識人役として奮闘
桐谷美玲、高畑充希といった今をときめく豪華メンバーが起用された本作。もちろん、その“豪華メンバー”の中には有村架純の名前も入っている。役どころは、「夢見る劇団員」緑山かのこ(グリーン)。女子ーズは5人揃った際に出せる必殺技「女子トルネード」で次々と怪人を撃破していくが、一方で女子特有の事情によりなかなかメンバーがそろわないというとんでもない弱点を抱える。「まつエクと怪人退治、どちらが大事なの?」と聞かれたブルー(藤井美菜)が「ごめん、まつエク」と答えるなど、物語はシリアスな戦隊モノが“女子あるある”にハックされる斬新な構成で進む。ちなみに有村架純はこのシーンで「まつエクのほうが大事なんて!」と答える常識人の役回り。演技派のつもりでいるものの、実際はまったく使えない大根役者という設定含め、彼女のコミカルな一面が発見できる映画だ。
Recommended Movie No.07
リトル・マエストラ
(2012年)あらすじ
日本海に面した小さな港町は、過疎化や高齢化により寂れるばかり。しかし、この町に存在するアマチュアオーケストラは町民にとって特別だった。レパートリーは「威風堂々」のみ、さらに年老いた指揮者が亡くなったことで解散の危機に直面するのだった。危機を救うべく、メンバーは指揮者から「自分譲りの天才指揮者」と聞いていた孫娘を呼び寄せ、再起を図ろうとするが……?
■自然体の演技がストンと腑に落ちる
本作の有村架純は、“天才少女指揮者”美咲役を演じる。可憐な女子高生の天才指揮者、しかし実際は高校のブラスバンドで指揮を務めているだけ。それでも「アマチュアのオーケストラなら」と考えて依頼を受けた美咲だが、的確ながらも上から目線な指示の出し方にメンバーの不満が爆発、一時はコンテストの出場すら危ぶまれる状態に。それでも徐々に気持ちがほぐれていき、最後は大団円のラストへ。有村架純の自然体の演技が、ストンと腑に落ちる映画だ。
Recommended Movie No.08
永遠のぼくら sea side blue
【日テレOD】
(2015年)
あらすじ
人生の岐路、大学3年生の冬。あるものは現実を悟り、夢を諦め、軌道修正していく。あるものは理想に燃え、果敢な挑戦に挑む。そんな季節の中、何も決められないまま社会人になろうとしていた学生たちが、エリート研究集団である海洋大学の学生たちと出会う。8人の男女は、海の近くの水族館を舞台に共同作業を行なうことに。徐々にお互いに惹かれ合っていく中で、彼ら彼女らはそれぞれの道を見つめ直していく。
■22歳、等身大の有村架純がここに
記念すべき有村架純のドラマ初主演作。有村に加え山崎賢人、矢本悠馬、成海璃子、東出昌大、窪田正孝といった実力派俳優・女優がズラリと顔を揃えたキャストの豪華さでも話題になった。有村架純の役柄は、自己主張が苦手な松岡あおい。波風を立てることを恐れ、引っ込み思案になっていた大学3年生だ。しかし、そうした傾向は何もあおいだけではないし、さらにいえばドラマだけのことでもない。自分を出すことが苦手な若者たちが、様々な交流を通じて徐々に心を開き合っていく。オンエア当時で22歳の有村架純にとって、本作の役柄はほぼ同い年。今回紹介する8作品の中では、最も等身大の役回りといえるのかもしれない。
いかがだっただろうか? ハードなスプラッターものからシリアスな社会派ドラマ、はたまたコミカルな映画まで、この多ジャンルな出演作をみるだけでも彼女がいかに「時代に愛されている」かを実感できるのではないだろうか。本記事公開時点で23歳とまだまだ若く、女優として波に乗るタイミングはいくらでも用意されている。大きなトラブルがなければ、向こう10年は日本の映画・ドラマ界を牽引していく女優になるだろう。今後も、有村架純の活躍に大いに期待したい
紹介作品一覧
(c) 2015映画「ビリギャル」製作委員会(c) 2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会(c)2016 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会(c)2009 花沢健吾/小学館(c) 2015映画「ストロボ・エッジ」製作委員会 (c) 咲坂伊緒/集英社 (c)TBS(c) 2014 「女子ーズ」製作委員会(c) 2012「リトル・マエストラ」製作委員会(c)NTV